ACRMTSM TOYAMA
The Block
硬さと強さからなる均一な立体感、積み重なり高みが増す空間
筆者 : 株式会社ACRMTSM 代表取締役社長 大槻優士
私がデザインした初の建築空間デザイン(ACRMTSM KANAZAWA)は、全建築家が憧れるRed Dot Design AwardやGERMAN DESIGN AWARDなどの世界的なデザイン賞を受賞しました。その第二弾です。
物件の選定、構想、打ち合わせ、内装施工、完成まで気付けば、1年半かかりました。この物件を使用するにあたり、周囲の土地6つと建物1つの売買契約を行い、全てを買い取ることから始まりました。制作前は自分の中で、地球や太陽から用いる壮大な曲線的デザイン案やその解釈も考えましたが、「限りなく小さいものは限りなく大きいこと」を理解し、この物件であれば自分の理想空間を表現できると感じ、徹底した理想的直線的空間からなる静寂さや、思想的な空間を創りました。
私が好きな郊外で店舗を構えるスピークイージースタイルも残し、先駆けのACRMTSM KANAZAWAと同じことをしているようで全く解釈も創り方も異なるけれど、並んだ時に親和性のある強いビジュアルも最終的な目標として考えました。

土間に沈着した30cmのグリッド。

土間に沈着した30cmのグリッドに準じて、目に映るものが30cmの倍数に収まるよう高さや幅を揃えています。

特注して職人と製作した什器も高さ、幅、奥行きが30cmの倍数になるようにしています。

屋上看板「ACRMTSM STORE」の「〜MとS〜の間の空白のスペース」も角まで15cmずつのトータル30cmの間隔を設定しています。見えていない部分にもデザインを加えています。
背景・コンセプトについて
The Block
既存であった30cm角のタイルカーペットを剥がし、その配置のまま色素を沈澱させることでグリッド(目安線)を創造。そのスペースに準じて目に映るものが30cmの倍数に収まるよう高さ、幅と奥行きに法則を設けることで平面でも立体でも視覚的に全ての物質が30cm角で支配されたデジタル化された静寂な仮想的空間を演出しました。(造作平台は120cm角、LGSの高さは210cm...etc)
店舗と土地を売買して、私たちとカスタマーのためだけの領域という意味のブロック(スペース)、塀を持つ門構えは閉鎖的で拒絶をしているかのようなブロックの意図も含み、ある概念が複数の事物に対応するものを内部に包み持ちます。
白い豆腐のようにただ柔らかさのある四角ではなく、コンクリートブロックのように硬さ、強さや、緊張感を持たないとならないブロック。お客様やメーカーとの関係の硬さや強さが、凛とした内包的な気概がないと硬いブロックとは認識しません。
この地で、その見えることも見えないものも含まれるブロックを高く積み重ねていきたいという気概を空間全体に設けています。多発する倍数で収まっている内装は、そこにある空気までも写す空間です。またテレビのように四角いスペースに光の三原色を組み合わせて色を創っているように、無彩色に彩られた空間の間に無数の色をイメージします。ACRMTSM KANAZAWAの視点と異なり、見えていないものをデザイン設計した空間です。
ACRMTSM TOYAMA
