ACRMTSM OFFICE
0を認めるリラックスして透明な創造をする無重力なオフィス空間
筆者 : 株式会社ACRMTSM 代表取締役社長 大槻優士
ACRMTSM KANAZAWAの横のテナントさまが撤退して、お声がかかり契約することになったのは約21坪の空間。壮大なことを考えつつ、不要なデザインを省いていく中でよりミニマルに機能をもたない空間を創りたくなりました。ブレーカーがないため電気工事、不揃いな地面を整える、正しい壁面づくりを行い、数多いパターンの中から最善を求めました。また自分自身も今まで空間をデザインしている中で自分なりの100%を求めて追求していましたが、ふと立ち止まって世の中を見ると100%のデザインを追求している空間が多い。(それはそうだし、それが100%かはおいておいて)
「無理せず等身大でいたい」という想いが最近あり、そんな自分が今「ああして、こうして、100%の装飾して完成を目指す」のは違うなと感じ、「あえて」「はずし」などギャップを謳わずストレートに僕の0%(等身大)を求めています。
パッと見たこの空間に対して当たり前にある必需的な要素(壁や照明、床など)へのこだわりを行ったところで、「この床やばー!」ってなることはないだろうし、天井6Mに対して「このライン照明の高さかっこいい!」と、感じ取ってくださる方が少ないのもわかっていたし、僕がこの選択や煮詰めた考えを「しても・してもしなくても」どうやってもこの空間に対しての「答え」になるのもわかっていました。良し悪しの二元論で語りたくないこだわりを無限として捉えました。等身大を認めたら、なんだか楽になれる気がします。
コンセプト
"0"
何かにかければたちまち0になってしまう。今から400年前までは0をいう数字、概念自体がなかったようで、かなり奇怪なものだったそう。有名な数学者、パスカルも0-4=0「何もないから4を引くんだから答えは0だろう」と、考えたという。江戸時代の物差し、端に書いてある数字は0ではなく1。「始まりや基準は1だった」

A「ケーキの箱がある、開けてみて?」
B「何も入っていない」
A「だからケーキの箱があると言っただろう」
B「空っぽだ」
箱の中にケーキが0個あるという表現はしない。
信号で止まっている車を見て
「あの車の速さは0km/h」
とは表現しない。
まさか空の財布を見て
「お金が0円ある!!!」
なんて表現もしない。
1階の下に行こうとしても
「0階だ!」
とはならず、地下一階になる。(イギリスにはグランドフロア0階がある場合もあります。)

一 二 三.... 十
※漢数字 : 100は百、1000は千
Ⅰ Ⅱ Ⅲ.... Ⅹ
※ローマ数字 : 100はC、1000はM
アラビア数字以外の数は0を持っていないことも多い。

何もない ▶︎ 0個あるという発想のありがたみ
1から9+0の数字のなかで「0は表現することが少ない数字。」この空間に0の概念を落とし込み、(表現されていても)表面化されない0のエッセンスをACRMTSMのコンセプトを色濃く写します。
a+0=a
a-0=a
a×0=0
足しても変わらず、かけても0であり、0は無限。
∞×0
何をかけても0になる数字が∞(無限)だけ計算が不能で定義することができない。新たな概念を加え、直感に反したことを受け入れます。
0.9999999....=1
ピッタリ1になるという考えに戸惑いながら、直感に反しているからといって否定切り捨てたりせず万物は有限という思想を覆し、無限という概念を。

出来上がった空間を集中してほしい。全部全部リアルタイムで実況するかのように観られると、待っててとそれじゃないとこの空間・作品の真価はわからないからという想いがあり、社員にも都度都度の報告はせず、目指す完成まで静かに待ってもらいました。ありがとう。
0は絶対的な基準、0を中心に正の数と負の数が誕生した。0以上の生の数字を持っていく建築空間デザインが常識的なのに対して、絶対的な基準を創造しました。イメージを走らし、終わっては始まり、始まりは終わらない見えない静寂なデザインを内包しました。

元々あったACRMTSM KANAZAWAの横のテナントを契約し壁を削り、動線を創ることで社員がより稼働しやすいスケールメリットを求めました。
ACRMTSM KANAZAWA OFFICE

CREDIT
Design : Yushi Otsuki(ACRMTSM) / Satoshi Miyakawa(seitaro design)
Photo : Masaki Oriyama(Apits Art Photography)