
【SHINYAKOZUKA】ISSUE #1

ISSUE #1
IF I WERE HEATH ROBINSON
以下、デザイナーシンヤコヅカ氏より
めっきりデジタルで読む事が多くはなりましたが、昔から文庫本は買ってすぐにカバーを外していました。
カバーを外した時のタイトルや著者名だけになる簡素さも素敵と思っていましたし、本棚に並べた時の統一性も大好きでした。
そして何よりどんなモダンなカバーも剥がせば、大正時代にタイムスリップしたような どこか懐かしい表情が現れるといったコントラストが良いと思っていました。

HEATH ROBINSON(ヒース・ロビンソン)という英国の挿絵家がいます。 彼の描く絵には非常に単純な作業のために非常に難解な機械を使用しており、 単純な事を大袈裟且つ難解且つシニカルにしている風刺画のような絵を描いています。

彼の作品の中の一つに釣り堀で釣りをしている人たちがいて、実はその釣り堀の地下で人が釣り人の竿に魚をつけているという絵があります。
この絵だけではありませんが、彼の描く世界と優れたデザインや豊かさは隠れたところにあるという自身の考えが重なりました。

ファッションに身を置く人間の一人としては学生時代に聞いた
WE ARE VISUAL. WE ARE FASHION.
という言葉が好きですが、自身の美意識を問いただすと 何をどうやっても抽象的(アブストラクト)や言い切らないという方向に矢印が向きます。
どうにか隠す事や余白の可視化をファッションで出来ないかと日々考えながら、今回はHEATH ROBINSONから頂いたインスピレーションを基軸に、3つのワードでコレクションを構成しました。
1 : HIDDEN JOY
何かの後ろ
何かの裏
ピントが合っていない
背景含みを持した言葉
見えないところで起こっている事をイメージすることは非常に豊かな行為だと思います。
2 : FAVORITE ONE WAY
人は2WAY以上で提案された時、「気に入った1WAYでしか使用しない。」という勝手な持論があります。
文庫本のカバーを外すのが好きか付けたままの方が好きかのように自分にとっての素敵な使い方をしてもらいたいです。 あくまで、このように使用してくださいとは言いたくありません。
3 : WHITE ELEPHANT
リサーチの過程で、好きな詩人である茨木のりこさんの「詩集と刺繍」という詩の中で、二つのししゅうの共通点は、「共にこれ天下に隠れもなき無用の長物」という一節を読んだ時に、HEATH ROBINSONが大げさにガチャガチャしているディテールを書き込んでいる絵が 無用の長物を描いていると感じ、また、その詩のシニカルさも HEATH ROBINSON と重なり、 無用の長物(英語でWHITE ELEPHANT)を盛り込もうと思いました。
もともとニッチな人間であるはずなのに、 いつからか分かりやすいもの・明快なものを求められたり、求めたりしていましたが、 そのままが良いんだよと自身の考えや制作を肯定してくれたのはファッションだったなと 恥ずかしながら、最近思い出しました。
HEATH ROBINSONなら SHINYAKOZUKAのために どんなデザインを大袈裟に少し斜め後ろからの視点で提供してくれるかなと、 イメージを膨らませながらニッチや不明瞭というものを全力で肯定したいです。